理事長あいさつ
(公財) 岡山県臓器バンク
理事長
田中 信一郎
(公社)日本臓器移植ネットワークの公表によると、令和6年1~7月までに脳死提供69件、心停止後提供5件と合わせて74件が報告されています。その内腎移植では、98名の登録者が手術を受けていただけています。昨年はコロナ禍での減少から回復の兆候が見られましたが、本年も同程度の結果になるのではと推測しています。しかし、一方では提供された臓器の受入が移植施設で対応できないという理由から、移植のチャンスを逃してしまわれた患者さんが生じるという残念な報道を聞き及んでいます。このような事態が再び起きないように、臓器移植の将来を定める専門団体の関係者の方々が改善策を検討されています。移植を希望されている患者さんが医療を信頼し安心して受け入れることができる新しい臓器移植のシステムが望まれます。
さて、令和5年度のバンク主催の「いのちのリレーを考える講演会」では、『小児の臓器移植』をテーマにいたしました。岡山大学学術研究院医歯薬学域 地域救急・災害医療学講座 小原 隆史 先生に「我が国における小児の臓器移植: これまでのこと。これからのこと」、鹿児島市立病院 小児科 山田 浩平 先生に「初めての小児臓器提供の経験より」、そして国立病院機構岡山医療センター 小児外科 高橋 雄介 先生に「小児腎移植の現況」と題したご講演を賜り参加者の皆さんと共に意見を交換することができました。
岡山県の救命救急の現場では、臓器の提供を受けることが医療の目的ではなく、残されたご家族が最期の時間をより良く過ごし、大切な人を看取れるよう支援することを役割と意識して業務に携わられています。臓器提供は、各々のご家族が望む看取りの選択肢の一つとして在ります。今回、テーマに取り上げました小児からの臓器提供においては、意思を自ら表明できないお子様が対象になります。ご両親やご家族がお子様への思いを巡らし、推し量り、決断していただくことになります。救急現場の医療者の方々のご両親・ご家族への一層のご配慮があっての賜物と考えます。
岡山県臓器バンクでは、最期の時間をどう看取るのか、そして臓器提供は色々な看取り方の一つであるとの考えで、今後も県民の皆様のご理解を賜る活動を継続する所存でございます。今後一層のご理解とご支援を賜ることができれば幸いです。
(臓器バンクだより第34号
(令和6年9月))